自然冷媒の主な種類であるCO2、アンモニア、炭化水素(R290・R600a)、空気、水について、使われる温度帯や機器、取り扱いの注意点を公的資料をもとに整理します。HFOとの違いも説明します。
自然冷媒は、自然界に存在する物質を冷媒として使うものです。環境省はCO2、アンモニア、炭化水素、空気、水を紹介しています。物質の名前だけで機器の用途は決まらず、必要温度と冷却方式に合う製品を選ぶ必要があります。
| 種類 | 機器での呼び名の例 | 主に確認する使われ方 |
|---|---|---|
| 二酸化炭素 | CO2・R744 | 倉庫や店舗の冷凍機、ショーケースの熱源 |
| アンモニア | NH3・R717 | 工場や倉庫の熱源、CO2との組み合わせ |
| プロパン | R290 | 冷媒回路を内蔵するショーケースや保存庫 |
| イソブタン | R600a | 冷蔵庫などの内蔵型機器 |
| 空気 | 空気冷媒 | 超低温の冷却など |
| 水 | 水冷媒 | 吸収式冷凍機など |
この表は冷媒の整理で、能力や安全性の順位ではありません。自然冷媒の位置づけは自然冷媒の基礎知識でも説明しています。出典は環境省の自然冷媒の解説です。
冷媒を選ぶ順番は、まず冷やす対象と必要温度を決め、次にその条件を満たす機器と冷媒回路を確認する流れです。たとえば店舗の冷凍売台と研究用の保存庫は、どちらもR290を採用する場合がありますが、陳列のしやすさと試料の取り出し方では必要な構造が違います。同じ冷媒を使っていることだけで、二つを代替機として扱わないでください。
倉庫と工場でも、保管と凍結は分けます。すでに凍った商品を低温で保つ設備と、投入した食品から短い時間で熱を取り去る設備では、負荷の変化が異なります。温度帯の呼び名だけでなく、何をどの状態から冷やすかを販売元へ伝えましょう。冷却器や搬送設備が別の会社の製品なら、熱源との接続を誰が確認するかも決めます。
保安の確認は冷媒ごとの性質に合わせます。CO2の圧力、アンモニアの毒性・燃焼性、炭化水素の可燃性について、それぞれ必要な設計と管理があります。この違いを、自然冷媒の中で安全な順を決める材料にはしていません。メーカーの説明、設置条件、担当者の運用を一緒に確認して判断します。
環境省の解説は冷媒の種類を理解する資料ですが、個々の型番の使用条件を認める仕様書ではありません。公的解説で冷媒を理解した後は、候補の製品情報、図面、取扱説明書へ戻り、施設で使う条件に対応するかを確かめます。紹介ページだけで判断できない項目は、未確認として照会内容に残しましょう。
CO2はR744とも呼ばれ、冷蔵倉庫や小売店舗の冷却で使われています。不燃性という性質がありますが、それだけで設備全体の安全性を判断することはできません。圧力への対策、漏えい時の換気や警報などを含め、機器の仕様に沿った設計と管理が必要です。
倉庫では冷凍機と庫内の冷却器を組み合わせ、店舗では冷凍機と別置型ショーケースを配管でつなぐ構成があります。同じCO2でも、保存室を冷やす機器と売場のケースでは、必要能力、設置場所、施工範囲が異なります。
また、アンモニアでCO2を冷却し、CO2を庫内側へ送る方式もあります。CO2という言葉が仕様書にあっても、熱源側に別の冷媒が使われる場合があるため、冷媒回路全体を確認しましょう。仕組みと製品の見方はCO2冷凍機へ進んでください。
比較表を作るときは、必要な温度、冷やす対象、運転する時間、設置場所の条件を一枚にまとめます。倉庫の室温、冷媒の供給温度、機器内部の設定温度は同じ意味ではありません。「何℃まで使えるか」という回答だけで決めず、その温度が何を測った値かを仕様書で照合してください。
また、カタログの冷却能力と消費電力は分けて読みます。冷却能力のkWは取り去る熱の大きさで、電気料金をそのまま表す数値ではありません。年間消費電力量の比較には、周囲温度、設定温度、扉の開閉、負荷の条件をそろえる必要があります。異なる試験条件の値を並べた省エネ順位は作らず、販売元へ同じ運用条件で試算を依頼しましょう。
現場の条件がまだ決まらない場合は、候補を一台に絞るより、決定済みの条件と未決定の条件を分けて伝える方が相談を進めやすくなります。図面の予定値と現地で測った値にも印を付け、見積もりの前提が変わったときに、どこを再計算するのか追える形にしておきます。
アンモニアはR717と表記され、食品工場や冷蔵倉庫の冷却設備に使われます。環境省は、アンモニアの充填量を抑えた設備や、二次冷媒と組み合わせる考え方を紹介しています。自然由来であることと、人体や作業環境への影響がないことは同義ではありません。
毒性や燃焼性を踏まえた設備・管理が必要です。機械室、換気、検知、警報、緊急時の手順について、設置条件に合う対策を設計者や保安の窓口へ相談します。異常時に利用者が冷媒回路へ手を加えることを前提にせず、連絡と退避の方法を決めておきましょう。
アンモニアを機械室側へ置き、CO2を二次冷媒に使う構成はアンモニア・CO2冷凍機で整理しています。機械室側に集めることはリスクを管理する設計上の考え方であり、漏えいしないという保証ではありません。
保守の相談では、販売窓口、設置工事会社、故障時の受付先をそれぞれ確認します。窓口が全国にあることと、設置場所へ夜間に作業員が来られることは別です。受付時間、初動の方法、現地対応の地域、交換部品の調達、点検費用を見積書や契約書で確かめてください。
警報機能があっても、施設側の連絡体制まで自動的に整うわけではありません。誰が警報を受け、誰が現場を確認し、温度が戻らないときにどこへ移すかを決めます。停電中にも連絡できるか、休日の担当者が機器の設置場所へ入れるかも確認しておくと、機器の仕様と実際の対応の隙間を見つけられます。
日常の清掃や点検は取扱説明書に従い、冷媒回路の分解や冷媒の補充を利用者自身で行わないでください。点検の記録には、型番、製造番号、設置日、異常が起きた時刻と状況を残します。修理相談のときに表示コードや温度の推移を伝えられるよう、担当者が替わっても見つかる場所へまとめておきましょう。
炭化水素系の冷媒にはプロパンやイソブタンがあります。冷媒回路を機器内部に持つ製品で採用されており、厨房庫、売場の内蔵型ケース、研究用保存庫などで確認できます。可燃性があるため、設置・修理は対象製品の説明書に従う必要があります。
R290はプロパンです。フクシマガリレイの内蔵型冷凍ショーケースや、日本フリーザーのSF-3120HCなど、用途の異なる機器で採用例があります。冷媒が同じでも売場の陳列と研究試料の保存は目的が異なるため、同じ候補として価格だけで比較しないようにします。
店舗での方式の違いはスーパーの自然冷媒ショーケース、保存温度の確認は研究施設の超低温フリーザーを参照してください。
R600aはイソブタンです。ホシザキは業務用冷凍冷蔵庫でR600aやR290の採用を公表しています。ただし、全製品を一律に同じ冷媒と扱わず、購入する型番の仕様欄を確認します。既設機が同じメーカーであっても、冷媒を入れ替えて使えるとは限りません。
飲食店では庫内容量や扉の位置、作業台との高さなど、日々の使い方も選定条件です。厨房の自然冷媒冷蔵庫で、設置と保守の確認点をまとめています。
冷媒名は、機器の銘板や仕様書で型番と一緒に確認します。同じメーカー、同じシリーズ名でも、発売時期や容量によって使用冷媒が異なる場合があります。「自然冷媒対応」という紹介文だけで、設置済みの機器や検討中の全機種が同じ冷媒だと判断しないでください。
冷媒を変えることは、電池を交換するような作業ではありません。設計圧力、圧縮機、潤滑油、配管、制御、安全対策の適合を確認する必要があります。既設のフロン機へ別の冷媒を充填して自然冷媒機にする、といった判断を利用者が独自に行わず、機器メーカーと施工会社へ相談します。
見積もりには、使用冷媒と対象型番を明記してもらい、将来の保守で誰が対応するかも確かめます。冷媒の環境面の説明と、現場の温度条件や作業性の説明は分けて読みます。環境負荷を抑える目的があっても、必要な冷却性能や運用条件の確認を省くことはできません。
環境省は空気冷媒を超低温の用途で紹介しています。空気を圧縮・膨張させる冷却の方式は、一般的な冷蔵ショーケースの置き換え先と同じものではありません。必要な温度と処理量に合う設備として、専門の供給元へ相談します。
水は吸収式冷凍機などに使われます。熱源として蒸気や排熱を利用する構成があり、冷水をつくる設備の検討と関係します。「水を冷やす機器」と「水そのものを冷媒にする機器」は別なので、カタログの熱源、冷媒、搬送する流体を区別してください。
自然冷媒という一つの分類に入っていても、厨房庫から倉庫の大型冷凍機まで一台で代替できるわけではありません。用途別の自然冷媒機器から、実際に冷やしたい対象に近い分野を選ぶと、仕様を確認する範囲が絞れます。
HFOは合成冷媒で、自然冷媒には含めません。環境省のフロン排出抑制法の説明では、HFOやCO2など同法のフロン類に該当しない冷媒を挙げていますが、「フロン類に当たらない」と「自然冷媒である」は異なる分類です。
ノンフロン、低GWP、自然冷媒といった表示を同じ意味で受け取らず、冷媒の物質名と機器の型番を確認します。環境上の性質だけでなく、必要な温度、設置条件、保守の担当をそろえて候補を絞りましょう。
低GWPという表現は温暖化への影響を表す指標の説明であり、機器の使いやすさや冷却能力を示すものではありません。冷媒名の確認と、現場で必要な機能の確認を分けて進めてください。